18歳で運転免許を取得したばかりの新社会人にとって、自分の車を持つことは単なる移動手段ではなく、ひとつの「青春の証」だった。1990年代、初任給の大半が生活費で消えるなか、「どうしてもクルマが欲しい!」という熱い思いから、無理を承知で長期ローンにサインする若者が続出した。
当時の街中では、ユーノス ロードスターやR32スカイラインGTS-t TypeMといったスポーツカーのエキゾーストノートが若者たちの鼓動と共鳴していた。「60回ローン」という大胆な決断は、今では考えられないほどの情熱的選択。給与明細を見てため息をつきながらも、愛車への支払いを最優先にする日々。インスタントラーメン三食続きでも、「会社食堂の大盛りご飯戦法」でも乗り切ったという伝説的なエピソードは、現在でも語り草となっている。
この時代ならではの背景として挙げられるのが、「車こそが最高の自己表現であり娯楽」という価値観だ。現代のようにスマートフォンやサブスクリプションサービス(NetflixやAmazonプライムなど)に分散する出費がなかった分、若者の情熱と可処分所得はクルマ一点に集中していた。あえて言うならば、「バブル崩壊後のリアルなカー文化」とも呼べるこの現象は、経済的には苦しくとも心躍る特別な時代だったのだ。
振り返れば「クルマのためにすべてを捧げた日々」こそが当時のリアルな青春像であり、「夢中になれるものがある幸せ」そのものだったのかもしれない。現代とは全く異なる金銭感覚と価値観の中で生まれたこのカルチャーは今や貴重な歴史となりつつある。
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