入院や治療で思いがけず多額の医療費を請求されることがあります。その際に頼りになるのが「高額療養費制度」ですが、実はこの制度には対象となる費用と、対象外とされる費用が存在するのをご存じでしょうか。
高額療養費制度は、同じ月内に医療機関や薬局で支払った自己負担額が上限額を超えた場合、その超過分が払い戻される仕組みです。上限額は年齢や所得区分によって異なります。対象となるのは公的医療保険が適用される費用で、診察料・検査料・処方箋料・手術費用・入院時の基本治療費などが含まれます。つまり、治療を目的とした保険診療は対象ですが、予防や快適性を目的とするものは基本的に含まれません。
見落とされがちな対象外の費用もあります。代表的なのが「差額ベッド代(特別療養環境室料)」です。個室や少人数部屋を希望する際にかかる費用は、治療に直接必要なものではないため制度の対象外です。厚生労働省の調査では、1人部屋で平均8437円、2人部屋で3137円、3人部屋で2808円、4人部屋で2724円とされ、入院が長期化すると負担が大きくなります。また、まだ保険適用が認められていない「先進医療」や、入院中の食事代・日用品代なども対象外となる可能性が高いです。領収書に記載される「保険区分」を確認すると、対象と対象外の区分を把握できます。
制度をスムーズに利用するには、事前の準備が欠かせません。マイナンバーカードを健康保険証として登録し、情報提供に同意しておくと、入院時に申請をしなくても自己負担額が限度額までに抑えられます。カードを利用していない場合や、オンライン資格確認に対応していない病院を受診する際は「限度額適用認定証」を事前に取得し提示することが有効です。また、大部屋を選ぶことで差額ベッド代を回避する方法もあります。
さらに、民間の医療保険を併用すれば安心です。入院給付金や先進医療特約などを活用することで、制度の対象外となる費用を補い、思わぬ出費を軽減できます。
高額療養費制度には、自己負担をさらに減らせる仕組みもあります。例えば「多数回該当」では、12か月以内に3回以上上限額に達した場合、4回目以降は上限額が引き下げられます。また、同一世帯での医療費合算も可能で、家族全員の自己負担額を合計することで払い戻しの対象となることがあります。
要するに、高額療養費制度は医療費負担を軽減する心強い制度ですが、公的保険適用分のみが対象です。差額ベッド代や先進医療は含まれず、入院費用が想定以上に膨らむこともあるため注意が必要です。万一に備えて制度の仕組みを理解し、限度額適用認定証や民間保険を活用することが、経済的な安心につながるでしょう。
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