長らく物価指数において「岩盤」とまで言われ、安定していた家賃が、ついに大きく動き出しました。
2024年3月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)では、「民営家賃」が前年同月比で1.1%上昇。これはなんと1994年10月以来、実に30年ぶりの大幅な伸び率です。
家賃は生活費の中でも大きな割合を占める項目。今回の上昇は、多くの世帯の可処分所得を圧迫し、個人消費の冷え込みを招く可能性も指摘されています。
■「東京で暮らす夢」が遠のく…院生が語るリアル
この春、四国地方から東京大学大学院に進学した男性は、キャンパスのある文京区周辺で住まいを探しましたが、家賃の高さに断念。最終的には足立区で妥協したといいます。
「物価全体が上がる中、支払える家賃の限界を感じました」と、彼は語ります。
文京区のワンルーム(約20㎡)の相場は現在月14万円前後。5年前と比べると1万~2万円高騰しています。
■家賃上昇は全国的な現象に
東京だけの話ではありません。3月の全国の民営家賃のCPI上昇率は0.4%。昨年6月から20か月連続で上昇中です。
不動産大手アットホームによると、2024年2月時点でのデータでは、
- 東京23区の30㎡以下の物件は5年で7.6%上昇
- 50~70㎡の家族向け物件では26.1%の上昇が見られました。
大阪、名古屋、福岡といった地方都市でも同様に、個人・家族向けともに家賃が上がっています。
■背景に「新築コスト増」「リフォーム反映」「マンション価格の高騰」
この家賃高騰には、いくつもの要因が絡んでいます。
- 建設費や借入金利の上昇により、新築物件はもとより高めの賃料に設定されがち
- 既存物件でも、リフォーム費用や共用部の電気代の高騰が家賃に反映される傾向
- 分譲マンションの販売価格の高騰により、購入を断念して賃貸に流れる人が増加
実際、不動産経済研究所が4月に発表したデータでは、首都圏の新築マンション1戸あたりの平均価格は前年比7.5%増の8135万円で過去最高を更新。東京23区に至っては平均価格が1億1632万円に達しています。
■「買えないから借りる」人が増え、賃貸需要が右肩上がり
新築マンション価格の高騰を受け、「買いたくても買えない」層が賃貸へ流入。それに伴い、賃貸住宅の需要が高まり、家賃もつられて上昇しているのが現状です。
また、大手賃貸管理会社・大東建託では、管理する約130万戸のうち約50万戸で家賃の引き上げを進行中。すでに約8割の入居者が値上げに応じたといいます。
首都圏に複数の物件を保有するオーナーも、「物価に応じた家賃上昇は当然」と語っており、今後もしばらくは上昇局面が続くと見られています。
■生活直撃、個人消費にも影響の可能性
家賃は食費や日用品と違い、「簡単に削れない出費」。そのため、他の消費を圧迫する結果につながりかねません。
三菱UFJ信託銀行の船窪芳和氏は、
「都市部では今後も家賃上昇の勢いが続く可能性があり、個人消費に対する負の影響が一層強まる」と警鐘を鳴らしています。
物価高が広がる中、「住む場所の選択肢」までが狭まりつつある現在。家賃という固定費の上昇は、今後の暮らし方や人生設計にも少なからず影響を及ぼしていきそうです。
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