2024年、訪日外国人の数とその消費額が過去最高を記録し、インバウンド市場の成長が日本経済に大きな影響を与えている。訪日外国人数は前年比47.1%増の3687万人となり、インバウンド消費額は8.1兆円に達した。この消費額は、かつての自動車に次ぐ規模となり、日本の輸出産業の中でも重要な位置を占めるようになった。しかし、その一方で、急増する観光客による負の影響も顕在化している。

特に、東京、大阪、京都などの主要観光地では、混雑や交通渋滞、ゴミの増加、住民の公共交通機関利用困難といった問題が深刻化している。観光地周辺では、トイレの整備や観光案内所の設置、ゴミ処理などのインフラ整備が急務となっており、これにかかる費用は自治体にとって大きな財政負担となっている。また、観光客による私有地への立ち入りを防ぐための監視カメラや警備員の配置、交通誘導員の手配など、観光関連のコストも増加している。

このような問題に対処するため、多くの地方自治体が観光税の一種である「宿泊税」を導入し始めている。東京都や大阪府、京都市などでは、観光税を利用して、観光インフラの整備や公共サービスの改善を進めている。宿泊税の収入は、観光による負担を軽減し、観光地の混雑やごみ処理などの問題を解決するための財源となることが期待されている。

一方で、宿泊税導入に対する住民や観光業界からの反発もある。特に観光業界では、宿泊税が観光客の減少を招くのではないかという懸念が広がっており、税の負担をどのように分担するかが大きな課題となっている。自治体は、宿泊税の導入に際して、地域の特色や観光客のニーズを考慮し、慎重に政策を進めていく必要がある。

インバウンドによる経済効果は大きい一方で、その影響を持続可能な形で管理することが求められている。観光税をはじめとした新たな対策が、地域住民や観光客、観光業者全体にとってバランスの取れた解決策となるよう、今後の議論と実施が注目される。