政府が発表した最新の労働統計が、日本経済の深刻な現実を浮き彫りにした。2025年2月の現金給与総額は前年同月比3.1%増と38か月連続でプラスを記録したものの、物価上昇の影響を考慮した実質賃金は1.2%減少し、2か月連続のマイナスとなった。厚生労働省が公表した「毎月勤労統計調査」の速報値によると、賃金の伸びが物価高に完全に飲み込まれる異常事態が続いている。
賃金上昇の陰で広がる「実質減収」の波
調査対象となった全国3万以上の事業所(従業員5人以上)のデータを分析すると、基本給や残業代を含む現金給与総額の平均は28万9562円と、前年同月比で3.1%増加した。特に基本給に相当する所定内給与は26万1498円(同1.6%増)と、40か月連続の上昇傾向を示している。
しかし、物価変動を反映した実質賃金は1.2%減少し、2025年1月に続いて2か月連続のマイナスを記録した。この結果は、名目上の賃金上昇が消費者の購買力を改善させるまで至っていないことを如実に物語っている。厚生労働省は「春闘の影響で賃金は堅調に伸びているが、物価高の圧力がそれを上回っている」とコメントし、今後の動向を注視する姿勢を示した。
ボーナス増加も「物価高」で相殺される懸念
さらに、2024年末のボーナス動向にも注目が集まっている。支給事業所における1人当たりの平均額は41万3277円と前年比2.5%増となり、実に16年ぶりに40万円の大台を突破した。2008年以来の高水準となった背景には、企業業績の回復や人手不足を背景とした賃上げ圧力の高まりが影響しているとみられる。
しかし、ボーナスの増加も、日々の生活コストの上昇によってその恩恵が薄れかねない状況だ。食料品や光熱費をはじめとする生活必需物価の高騰が続く中、家計の実質的な余裕は依然として逼迫している。
賃金と物価の「不均衡」が招く経済リスク
このような賃金と物価の不均衡が長期化すれば、消費の冷え込みや景気減速のリスクが高まる。特に、可処分所得が減少する低・中所得層の購買力低下は、小売業やサービス業に直接的な打撃を与える可能性がある。
経済専門家の間では「賃金上昇が物価高に追いつかない状況が続けば、デフレ的な心理が再燃する恐れがある」との指摘も出ている。政府・日銀は物価安定と持続的な賃金上昇の両立を目指す政策運営が求められるが、現状ではその難しさが浮き彫りになっている。
今後の焦点は、2025年春闘の賃上げ相場や企業の価格転嫁動向、そして政府の経済対策に移りつつある。家計の実質的な豊かさを取り戻すためには、名目賃金のさらなる伸びと物価安定の両輪が不可欠だ。しかし、現時点ではそのバランスが大きく崩れたままとなっており、早期の是正が急がれる。
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