運転手が足りない。地方だけでなく鹿児島市内でも運転手不足による路線バスの減便・廃止が相次ぐ。住民の移動を支えるバス業界の求人難は深刻だ。待機時間のある変則勤務や事故リスクが敬遠されがちな上、平均年齢の高さなど構造的問題も横たわる。バス運転手を取り巻く実情を紹介する。(連載かごしま地域交通 第2部「運転手はどこへ」⑦より) 「このまま日本で働いて、子育てもしたい」…お茶に魅せられたベトナム女性、家族と永住可能な「特定技能2号」に一発合格
2030年度には運転手が3万6000人不足する-と日本バス協会が試算する中、政府は24年3月、解消策として長期的に外国人を受け入れる在留資格「特定技能」に自動車運送業を追加した。9月にはバスやタクシー乗務に必要な第2種免許の学科試験を20言語で受けられようになった。 ベトナム出身で、鹿児島で通訳として働くグェン・ヴァン・ナムさん(35)は5年前、自国で取った免許の切り替え試験を受け、日本の普通自動車免許を取得した。仕事の幅を広げるため、現在は大型免許の取得を目指している。「母国の免許を持っていたからスムーズにいった。技能実習生のような若手は保有していない人も多い。日本で一から免許を取るのは大変かも」 ナムさんは知り合いから、「入れる教習所が鹿児島にない」「普通免許が取れたとしても、大型や2種を受験できる頃には帰国間近だ」と相談される機会も多いという。 □ ■ □ 第2種受験には、普通自動車などの第1種免許を取得して3年以上経過していることが条件となる。つまり普通免許の保有が大前提だ。
鹿児島市の玉里自動車学校は20年ほど前から普通免許取得を目指す外国人を受け入れている。学科の教科書は各国の言葉で訳されており、外国人でもある程度理解できる。「問題は実技の講習だ」。指導員の有川浩平さんは経験をもとに指摘する。 以前、片言の日本語が話せる生徒と路上教習に出た。交差点中央で右折待ち中、信号が赤に変わったため「行ってください」と指示。しかし生徒は「『赤は止まれ』と教科書で習いました」の一点張りで交差点に滞留してしまった。 有川さんによると、運転操作の習得で日本人との差を感じる場面はない。ただ臨機応変の動きや細かいニュアンスを伝えにくい点は否めない。とっさの判断が求められる公道では重大事故につながりかねない。「通訳者を同乗させて実習できれば意思疎通もうまく図れるのに」 □ ■ □ 国は、特定技能資格を有する外国人がバス運転手になるためのもう一つの条件として、日本語能力試験「N3」以上を規定している。日常的に使われる日本語をある程度理解できる水準とされ、5段階中の真ん中のレベルだ。日常レベルの会話ができれば、職業選択の幅も広がる。
「N3保有者がわざわざバス業界に来るとは思えない。制度の趣旨が担い手確保だという点を考えれば1段階下のN4ではどうか」と鹿児島交通の西村将男副社長。運転能力を重視すれば運行に問題はないとし、日本語能力の条件緩和を求める。 特定技能の外国人受け入れには、送り出し機関への手数料などで一人当たり100万円以上かかる例もあり、バス事業者の負担は小さくない。西村副社長は「本当に外国人材を集められるなら助かるが、絵空事のように感じる。国にはもっと現場を見てほしい」と話す。外国人材がバス業界の「救世主」となるための道のりは遠い。 =おわり= (この連載は飯田瑞貴、浜田翔也、小手川美子が執筆しました)
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