サイゼリヤの2024年9~11月期の営業利益が過去最高を記録した。 この好調を支える要因の一つとして報道されているのが、「低価格の維持」。インフレが続く時代だが、サイゼリヤは長い間メニューの値上げを行っていない。それが、より多くの消費者からサイゼリヤが選ばれた原因の一つだという。 【画像10枚】「ちょっと味落ちた?」との声もあるが…安すぎるサイゼの人気メニューたち その「低価格の維持」に貢献しているのが、サイゼリヤが目指している「ファストカジュアル化」戦略。 今回は、サイゼリヤ過去最高益のニュースから、サイゼリヤの「ファストカジュアル化」への変化と、それを取り巻くファミレス業界について解説していく。
■国内サイゼ躍進の「ファストカジュアル化」とはなにか 決算の詳細を見てみよう。 【画像12枚】「ちょっと味落ちた」との声もあるけど…安さはスゴい! サイゼの人気メニューたち 連結の業績で見ると、今回の営業利益は、前年同期比13%増の39億円。 特に大きく改善されたのが、国内事業だ。国内営業利益は前年同期と比べ、2500万円から5億円と20倍になっている。一時は国内事業が赤字になるときもあったから、大きな収益の改善がはかられている。
その躍進のエンジンとなったのが、サイゼリヤが取る「ファストカジュアル化」戦略だろう。 ファストカジュアルとは、「ファミリーレストラン」と「ファストフード」の間に位置するもので、価格帯としてはファミレスよりも安く、ファストフードより手の込んだ料理を食べられる業態だ。 ■ファストカジュアル化の要点は3つ 「ファストカジュアル化」の要点は3つ。①低価格路線の維持と②メニュー数の削減、そして③店舗数の増加だ。この3つは絡み合っている。
より安く商品を提供するため、サイゼリヤではメニュー数の削減を行っている。メニューを減らせば、物流効率や店舗での作業効率が減る。その分、削れる経費を価格に反映させる……というわけだ。 いわば、ファミレスでありつつも、ハンバーガー含む数品だけが提供されるファストフード店に近付いている。 2023年には秋のメニュー改定に合わせ、通常メニュー141品目を101品目に減らした。こうしたメニューの精選は今に始まったことではなく、サイゼリヤではかねて商品のブラッシュアップを行い続けてきた。
ただ、141品目から101品目への削減はラディカルで、ファストカジュアル化への方向をより鮮明にさせたといえるだろう。 また、ファストカジュアル業態が優れているのは、メニュー数が減って調理工程が単純になればそれだけ大きなキッチンが不要になり、小規模な面積でも出店が可能になること。 実際、サイゼはメニュー数の削減を行うとともに、国内店舗数を2000店舗にする中期目標をぶちあげている。2024年8月期の国内店舗数は1038店舗なので、ほぼ2倍にする目標なのだ。
2023年秋の改定が徐々に浸透してきたのだろう。昨年は多くのメディアで「サイゼのメニュー表がスッキリした」「メニューが減って悲しい」ことについての報道が出ていた。 これらへのコメントとして「価格据え置きじゃなくてもいいから、メニュー数を維持してほしい」という意見も出ていた。中には「もう俺たちが知ってるサイゼじゃない」なんて声も。 確かに、私も久々にサイゼリヤに行ってグランドメニューを見たら、かなりスッキリしていて驚いた記憶がある。
それに、2024年には、メニュー表裏面の間違い探しでおなじみの、キッズメニューが無くなった。さすがに「間違い探し」のファンが多かったのだろう。間違い探しだけは残ることになった。オマケが本体を食っている。 こうした報道もあって、「メニューの大幅削減」をファンがどう受け止めるのか、注目が集まっていたが、その結果は利益20倍という、数字に出た。 ■国内店舗数増加で、より強い利益の柱になっていく? とはいえ留意も必要だ。
というのも、決算の内訳をみていくと、その利益の多くは、これまでと同じように海外事業によるものだからだ。サイゼリヤのアジアでの営業利益は32億円で、全体利益の約82%。これは国内利益の5億円と比べて、6倍近い数字である。 ここ数年、サイゼの「国外で稼ぐ」傾向は顕著で、一部では「もはやサイゼの国内事業は福祉」なんて言われたりもしていた。けれど、先ほども見た通り、国内事業も着実に業績を伸ばしつつある。
加えて、先ほども書いた通り、現在サイゼリヤは国内店舗を2000店舗に増加させようとしている。 サイゼは徹底した効率化により、独自のビジネスモデルを発展、確立してきた企業だ。ファストカジュアル化によって、1店舗当たりの利益が少なくても、店舗数が増えることでしっかり利益が出る算段を立てているのだろう。 当たり前だが、「福祉」ではないことは確かである。 ■サイゼリヤを取り巻く厳しいファミレス事情 サイゼリヤがこうした「ファストカジュアル化」に舵を切ったのは、昨今のファミレス業界を取り巻く環境がある。
日本ソフト販売株式会社が発表している統計データによると、2023年7月~2024年7月にかけて、ファミレスの数は1.5%減少。前年は3.2%減少、一昨年は1.8%減少しており、年々少しずつ数が減る傾向にある。 店舗数上位であるガスト・サイゼリヤ・ジョイフル・ココスの店舗数はすべて減少しており、数の面で見れば「ファミレス」という業態自体が天井に達していることがわかる。 こうした背景には、いわゆる「カテゴリーキラー」といわれる専門店のチェーンレストランが多く誕生し、それらの質も向上していることがあるだろう。
ニーズが複雑化・多様化している中で、「なんでもある」ファミレスはどこか中途半端な存在になり、ニーズに応えられなくなっているのではないか。いわば、ターゲットがあやふやになっているのだ。 また、「ファミリーレストラン」がその主たるターゲットにしている「ファミリー」自体が減ってきていることも見逃せない。 1990年代以降、単身世帯の増加は顕著で、2045年には、その割合が45%まで増加する傾向もある。ファミリーであれば、家族の好みそれぞれに対応できるファミレスの需要も高いが、単身世帯だと個人の好みに合わせて専門店に行くことも増えていく。
■ファミレス業界も「高価格」「低価格」に二極化 こうした流れに対応するように、現在のファミレス各社の戦略を見ていくと、「なんとなく、なんでもある」ではなく、店としての「個性」を明確にしつつあって、特に価格の面では高価格志向・低価格志向の二極化が進んでいる。 この「低価格志向」の代表的なファミレスとしてサイゼリヤとガストがある。サイゼリヤの「ファストカジュアル化」は、こうしたファミレス業界の流れにおける戦略の一つなのである。
ちなみに、同じく一部商品の値下げを2023年に実施したガストを運営するすかいらーくグループも、2024年1~9月期の連結決算にて純利益が前年同期比2.3倍の104億円となり、好調だ。 グループ全体の決算だから、「ガスト」単体ではないものの、グループの主軸である同ブランドが好調なことは容易に想像がつく。 それを証明するかのように、同社が持つ中価格帯ファミレスである「ジョナサン」は減少の一途を辿っている。
いわば、低価格を求める人に対しての「選択と集中」路線が功を奏しているとみることができるわけだ。 ■空間的にも「低価格路線」に「選択と集中」している 「ファミレス」から「ファストカジュアル」へのサイゼリヤの進化は、現状うまくいっている。 ちなみに個人的には、サイゼリヤの好調を支えているのは、メニューの変化等の大きな改革だけでなく、店舗レベルでの細かい配慮も効いてきているからだと思う。 というのも、サイゼの店内を見ていると「低価格を求める人」に最適化された空間の工夫があるからだ。
例えば、その顕著な例が注文システムだろう。 2025年現在、サイゼリヤでは基本的にモバイルオーダーが取られているが、そのシステムは、商品の番号を入力するだけで、ボタンも大きく操作がしやすい。 今までの紙でのオーダーの良さを残しつつ、幅広い世代が直感的に理解できるようなUIになっているのだ。飲食店でのセルフオーダーは意見が分かれる施策だが、サイゼのやり方だと、デジタル機器に使い慣れていない人でも、簡単に使うことができる。
例えば所得が少ない単身高齢者や、所得が低くデジタル機器を普段からそこまでは利用しない層の人々にとっても、ストレス無く注文ができる。 サイゼリヤの「ファストカジュアル化」が完全に成功するかどうかは、予断を許さない。 けれど、「低価格を求める人」に「選択と集中」するサイゼリヤは、今後の日本の飲食業界の中で確たる位置を占める可能性が高いと思う。
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