NHK解説者の武田一浩氏(元日本ハム、ダイエー、中日、巨人)が、前月の球界のニュースを振り返る。今回は世間に衝撃を与えた田中将大投手の退団報道から始めよう。【全2回の前編/後編も公開中】 【レア写真】「ほ、ほそい…17歳時」マー君が佑ちゃん、大谷さんとニコニコ、里田まい夫人とも仲良し…などレア写真を全部見る ◆◆◆
「(楽天)もったいないと思うよ…」
11月24日、楽天の田中将大(36歳)の退団表明に球界は揺れた。甲子園のスターだった田中は、楽天にドラフト1位で指名されると2013年には24連勝で球団初の日本一に貢献。メジャーからの帰国後も楽天に復帰した。楽天にとっては、押しも押されもせぬ生え抜きレジェンドである。 しかし、今季は昨年の右肘手術の影響もあって1登板にとどまり、初めて未勝利に終わっていた。これを受けて、球団は減額制限を超える年俸を提示したが、田中と交渉がまとまらなかった。一部報道では、1億円を下回る年俸を提示されたと見られる(今季推定年俸2億6000万円)。 武田氏は、楽天の姿勢を嘆いた。 「生え抜きで、あれだけ貢献したんだから1億円くらいでもいいと思っちゃう。昔と違って今の日本球界は年取った選手をバッサリクビにしたり、年俸を下げたりする傾向があるけど、それはもったいないと思うよ。まだできる選手はいるから。楽天は2年契約だった今江(敏晃)監督を1年限りで解任したばかりだし、選手やスタッフをもっと大切にしなきゃいけないと思うよ。マー君は球界のレジェンドでもあるし、手術して1年目でそこまで厳しく評価しちゃうのはどうなんだろう」
「楽天に入りたい選手も少なくなるのでは…」
今回、田中と球団の交渉では、同じく投手として一時代を築いたSD(シニアディレクター)の石井一久氏が間に立っていた。田中の心情への共感は強そうだが……。 「俺は一久のことはよく知っているけど、マー君に伝えたことは本心ではないはず。あれだけ貢献して、今まで尽くしてきたマー君には、それが一瞬で崩れ去るような感覚だったんだろうね。俺がマー君の立場だったら、退団する気持ちはわかるよ」 球団創設以来、楽天の編成にはオーナーの意向が強く反映されると、しばしば言われてきた。石井氏は田中を守ることはできなかったのか。 「あそこはオーナーが強いからね。しかも、一久は過去に楽天のGMをやって監督もやったけどなかなか結果がでなかった。それでもSDになって、来年からGMになる。そういう立場もあるからなかなか自分の意見は言いづらいんじゃないの。結局、球団の方針には従わざるを得ない。球団社長の森井誠之は明治大の後輩だから頑張ってほしいけど、彼もまだ50歳と若いから意見するのは難しいんでしょう」 こうした一連の騒動にはファンからもさまざまな意見があふれており、武田氏とは逆に、「1勝もしてないなら、これだけの減額は当然」という球団の方針を認める声もすくなくないようだ。 「プロ野球ってほんとに大変なんだよ。大体のプロ野球選手は24時間野球のことを考えてる。どうやったら上手くなるか、勝てるかをずっと考え抜いて、マー君なんて20年くらいそうやって生きてるんだから。怪我をしても来年頑張ろうとしてくれてるんだし、あのレベルの選手をそういう短期的な基準で評価しちゃいけない。あと、(レジェンドの)マー君に対してもこういう扱いなのかと他の選手が思ったら、FAを獲得したら出てっちゃうよね。楽天に入りたい選手も少なくなるだろうし」
「マー君は150回投げられる」「10勝10敗でもいいから…」
12月9日現在では、田中の獲得に手を挙げている球団は明らかにされていないが、武田氏は「まだまだ投げられる」と言い、田中の投球を評価する。 「マー君はボールのスピードが落ちても、コントロールがいいからある程度は抑えられる。今季の登板を見たけど、ボールも悪くないし、150イニングはまだ投げられると思うよ。俺が球団の編成だったら10勝10敗でもいいからとるね。素行面で敬遠されているとか色々言われるけど、OB連中のなかではそういう話はないし、会っても礼儀正しい。若手の手本になる投手でもあるから、どこか獲得してほしいね」 田中は現在日米通算197勝と大台まであと3勝に迫っている。なんとか200勝して欲しいというのは、球界の総意なのではなかろうか。 「200勝はして欲しいよね。ただ、最近はそういう『ベテランに最後の花道を』みたいな球団も減っている。経営的な問題もあるんだろうけどね。でも、本人にどれだけまだハングリーさがあるかだよね。俺も経験してるからわかるけど、35歳くらいになると、野球に飽きてくるんだよ。思い通りにプレーできなくて根気がなくなってくる部分もある。これまで順調に来てたマー君も、野球人生で初の0勝という挫折を味わってる。ここでまだハングリーにいけるかが、今後の成績にも関わってくると思うね」
辰己の金ピカ「別にいい」「でもメリハリは必要」
一方、同じ楽天で話題になった選手がもうひとり。ベストナインや最多安打、ゴールデン・グラブを獲得した辰己涼介だ。辰己は、表彰式に甲冑姿や顔を金ピカに塗った姿であらわれたが、それに賛否があったのだ。 「ああいうパフォーマンスは、別にいいと思うよ。賛否があるっていうのは、みんな興味があって有名になった証拠だからね。ただ、インタビューで時々ボケるのはいいんだけど、メリハリが必要。ちゃんと答えるべきときは、答えた方がいい。ピントがずれているときもあって、大丈夫かと思うときがある。そういう選手は、アナウンサーやメディアも困るからね。古田敦也(辰己の立命館大の先輩)の前ではちゃんとしていたから、彼にしっかり指導してもらったらいいかもしれない」 また、辰己の受賞と同時に新人王に輝いたのが、船迫大雅(巨人)と武内夏暉(西武)だ。いずれも投手であるため、武田氏の関心も及んだ。 「武内は来年からは最多勝争いすると思うよ。今年だって10勝して防御率2.17。西武がもう少し強かったら最多勝ラインに乗ったでしょ。ボールは素晴らしいからね。防御率を見てもわかるように打たれてない。ルーキーで2点台は大したものだよ」
「マー君、巨人がいいんじゃないか」
一方の船迫とは2023年シーズンのキャンプ中に交流があったそう。 「キャンプに行ったら、当時監督だった原辰徳さんに呼ばれて、『船迫にカットボールを教えて』って言われたんだよ。サイドスローはシュート回転するとボールが抜けて打たれやすい。シュート回転しないボールが基準にならないと、変化球も生きないからね。だから、スライド回転の意識をして、みたいな話はしたんだよ。カットボールを覚えられたのかは、わかんないけど」 こうした武田氏のアドバイスもあってか、2023年は開幕一軍デビュー。そして今年は51試合に登板し、防御率2.37、4勝22ホールドを記録した。 「今年はボールの質もコントロールも良くなったね。彼はガッツある性格だから、それもいいよ。巨人は大勢もいるから、後ろの安定感があるね」 ちなみに、巨人は今年エース菅野智之が海外FA権を行使し、来年からメジャーへ渡る。先発の一角を失うことについて、武田氏はこう述べた。 「それこそ、マー君は巨人がいいんじゃないかって思うけどね。個人的には、先発を外国人で補強するのは反対だな。リリーフは別として、大体、外国人の先発はローテーションに入って二桁勝つほうが稀。スピードは速いけどコントロールが悪いとかよくあるからね。そのうち、日本に合わないとか言ってみたり、途中で帰国したりするし。それなら、日本人ピッチャーを2人競わせれば、頑張って1年間投げるよ。日本は外国人先発投手の評価が高過ぎる気がするね」 球界のレジェンド、田中将大の去就を筆頭に、シーズンオフの各球団の補強動向も見逃せない。 <後編に続く>
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