■仙台の両サイドは裏抜けを狙ったが
12月7日に行なわれたJ1昇格プレーオフ決勝、ファジアーノ岡山VSベガルタ仙台の一戦(会場:岡山のホーム・シティライトスタジアム)は、岡山の2対0の勝利に終わった。仙台は、なぜJ1昇格に手が届かなかったのか。岡山は、なぜクラブ史上初のJ1昇格をつかみ取ったのか。4つのポイントでその要因を読み解く――。 ■【動画】「あ~~~」解説席からも雄叫び 岡山、J1昇格を手繰り寄せたMF末吉塁の見事なループ先制点 1つ目は「先制点」、2つ目は「ホームの後押し」。 そして、3つ目のポイントは「マッチアップ」だ。 岡山は3-4-2-1、仙台は4-4-2のシステムを敷く。今シーズン2度の対戦で、仙台はPKによる1点しか奪うことができていなかった。「頑張って粘って失点0でいきながら、ボールを奪ってゴールへ向かっていく」(森山佳郎監督)というが仙台のゲームプランで、2列目の郷家友太とMF相良竜之介が相手ウイングバックの背後を突くとの狙いを持っていた。システムのミスマッチを突くのである。 しかし、彼らの裏抜けから相手守備陣を脅かした場面はなかった。郷家は「3バックの真ん中の選手が、うまくスペースを消しに着たりもしていて、狙いにくかったところはあります」と振り返った。 今シーズンの戦いぶりを見れば、左サイドの相良がドリブルで相手を剥がし、彼のクロスに2トップのエロンと中島元彦、さらには郷家がゴール前へ飛び込むという形を作りたかったはずだが、相良はウイングバックの本山遥と右CB阿部海大に厳しく警戒され、彼らしい突破のシーンを作り出せなかった。仙台から見て左サイドのマッチアップは、勝敗を分けたひとつのポイントだった。 仙台は後半開始からMFオナイウ情滋を投入し、彼のクロスから中島がシュートへつなげたり、彼自身が単独でシュートへ結びつけたりした。53分にペナルティエリア内から放たれた右足シュートは、この試合最大のビッグチャンスだっただろう。だが、オナイウは天を仰ぐ。GKブローダーセンに弾かれたのだった。 今シーズンの仙台は、失点を大きく減らすことでJ1昇格プレーオフ圏に滑り込んだ。しかし、攻撃は13ゴールの中島の「個」の力に頼るところがあった。 就任1年目の森山監督は、昨シーズン16位だったチームを立て直した。それは間違いない。ただ、チームとしての「決め切る力」には、個のクオリティも含めて課題が残った。シーズン最後の大一番で、その課題が表われてしまったと言える。
■岡山にあって仙台になった「強力な交代カード」
4つ目のポイントは「交代カード」だ。 1対0で迎えた60分、岡山は1トップの一美和成に代えてFWルカオを投入した。直後の61分、敵陣右サイドでスローインを受けたルカオは、馬力のある突破で仙台陣内へ切り込み、本山の2点目をアシストした。 本山がペナルティエリア内右から繰り出した一撃は、シュートブロックに入ったDFに当たってコースが変わり、GK林のセーブが及ばなかった。しかし、ルカオの馬力ある突破に仙台の守備陣が何人も引きつけられ、その結果として本山との距離を詰め切れなかった、シュートをブロックしきれなかった、と言うこともできるだろう。 ここからの時間帯は「ルカオ劇場」だった。72分、相手CBを背負いながら反転し、右ポスト直撃のシュートを放った。83分にもペナルティエリア内右から右足を振り抜き、右ポスト直撃のシュートを浴びせた。 背番号99のブラジル人がボールに触るたびに、スタンドの熱が上がり、それが仙台へのプレッシャーとなる。ルカオの登場で、岡山のホームアドバンテージがさらに際立つという効果もあった。 ひるがえって仙台は、オナイウの投入後もドリブラーのMF名願斗哉、FW中山仁斗を攻撃のカードとして切ったが、ルカオのようなインパクトは残せなかった。 スーパーサブと呼べるような選手は、シーズンを通して見つけられなかった。夏の移籍市場でレノファ山口FCから獲得したFW梅木翼は、加入後11試合出場でノーゴールに終わっている。スピードスターのオナイウも、32試合出場で2ゴールと得点力には課題を残した。 試合後の森山監督は「J1に上がれるまでの力は足りなかったかな。J2のこのまま上がっても苦しかったと思いますし、もう一回しっかり地力をつけて、上がったときには残っていけるようなチームを作っていきたい」と話した。 仙台にとっては残酷な結果だが、岡山の勝利に驚きはなかったのである。
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