みなさん、こんにちは。囲碁棋士の塚田千春です。
囲碁を学ぶといろんな力が身につくと言われています。一心に読みを深めることで集中力、盤面を広く見渡して最善の一手を考えることで大局観や判断力、頭をフル回転させるので脳が鍛えられる、なんて言われることも……。
私も学生時代、「囲碁をやっている」と言うと「頭がいいんでしょ?」とか「記憶力がいいんでしょ?」と言われたものです。今回のコラムでは、囲碁が私に与えてくれた力についてお話ししたいと思います。
自然と身についた「礼儀作法」、病院でも大声であいさつ
まず、何げに今も役に立っているのが、囲碁を学ぶ中で身についた「礼儀作法」です。「棋道」という言葉があるように、囲碁の世界では、柔道・剣道・華道と同じように、古くから礼儀と品位が重んじられてきました。打ち始めるときには必ず互いに一礼し、対局後も一礼して終わります。対局中も、相手に不快な思いをさせないよう気を配ることが求められます。
こういう習慣って自然と身につくもの。幼稚園の年少のころ、風邪を引いて病院に行ったとき、診察室のドアを開けた私が一礼してから「よろしくお願いします」と大きな声であいさつをしたので、お医者さんがビックリして大笑いした、なんてこともありました。
学校の成績は自慢できないけど、社会のテストで1回きりの奇跡が…
「頭が良くなる」……については、何をもって頭が良いというかは別として、こと学校の成績についていえば、多分、私自身には当てはまりません。小学校のころからプロを目指していたのですが、徐々に学校の勉強はおろそかになり、少しずつ授業についていけなくなりました。先輩方には勉強と囲碁を両立して、一流大学を卒業された方も少なくないので、本当にすごいなと思います。
あ、ただ、汚名返上のために言わせていただければ、記憶力には少し自信があります。中学生時代、社会科の定期テストで100点満点を取ったことが唯一のプチ自慢(笑)。ただし、「唯一」と書いたのは、そんな奇跡はその1回きりだったからでした……(笑)。
集中力、忍耐力、思考力――こうした力はどれも囲碁を打つ中で少しずつ磨かれていきます。持ち時間3時間の対局が多いですが、対局中は一瞬の油断が命取りになることもあり、集中力を切らさず、常に考え続けなければなりません。
「失敗から学ぶ」「気持ちの切り替え」では、まだまだな私
また、囲碁は「失敗から学べるゲーム」でもあります。負けた時は、地球上で一番情けない人間だと思うくらい落ち込むこともありますが、ただ落ち込んでいるだけでは次に繋(つな)がりません。負けた対局から学び、反省し、それを次に生かすことで成長していけるのです。その気持ちの切り替えがとても大切だと感じます。
私が憧れる上野愛咲美先生は、その気持ちの切り替えがとても早いと聞いたことがあります。実際に何度か記録をつけさせていただいたときも、終局の時にはすがすがしく、既に次の目標を見据えているようでした。やはり強い方は違うなと思いました。
囲碁から学べることは数え切れないほどありますが、気持ちの切り替えや失敗から学ぶ姿勢については、私もまだまだ努力が必要です。以前のコラムでお話ししたように、一人カラオケや担々麺の力を借りることもあります(笑)。どんな形であれ、勝ちも負けも自分の財産にして、成長していきたいと思います。
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