「良い取り組み」との声が上がる一方、「重症なのに連絡しない人が出てきそう」と懸念の声も
緊急性が認められない救急搬送について、患者から「選定療養費」を徴収する取り組みが茨城県で始まりました。 【画像】「えっ…!」これが救急車のサイレン鳴らせる「謎のボタン」です(21枚) 都道府県単位では全国初の取り組みですが、これを導入する背景には一体どのような事情があるのでしょうか。
近年、消防署に「家の鍵を落としたので開けてほしい」「タクシーがつかまらないから来てほしい」など緊急性のない通報をしたり、入院の必要がない軽症で救急車を呼んだりする事例が多く発生しています。 総務省が公表している「令和5年版 救急・救助の現況」によると、2022年中に救急搬送した621万7283人のうち軽症の人は294万106人であり、全体の47.3%を占めました。 軽症患者の中には緊急性の低い症状の人もおり、真に救急医療を必要とする重症患者の搬送を妨げるおそれがあると指摘されています。 このような状況は全国各地で見られ、茨城県では2023年中の救急搬送が過去最多の14万3046件を記録した上、全体の47.9%に当たる6万8549件が軽症患者の搬送でした。 これを受けて茨城県は2024年12月2日、緊急性の認められない救急搬送について患者から「選定療養費」を徴収する取り組みを開始しました。 三重県松阪市では2024年6月からすでに3つの基幹病院において同様の取り組みが始まっていますが、都道府県単位で実施されるのは全国で初めてのことです。 なお選定療養費とは、紹介状を持参せずに大規模な病院を受診した場合に患者が負担する費用であり、患者にかかりつけ医・診療所などへの受診をうながして、大規模病院の負担を軽減するねらいがあります。 勘違いされがちですが、今回の取り組みは「救急車の有料化」ではなく、あくまで既存の選定療養費制度の運用が見直されるものといえるでしょう。 また緊急性がある症状かどうかは医師が判断し、緊急性の認められない事例としては軽い切り傷や擦り傷、微熱、風邪の症状、虫刺されなどが挙げられます。 ただし結果的に病院で軽症と診断された場合でも、「救急車を呼んだ時点」で緊急性があれば選定療養費を徴収されることはありません。 この取り組みは茨城県内の病床数が200以上ある22の病院でおこなわれます。 選定療養費は基本的に7700円ですが、病院によっては1100円~1万3200円までと費用が異なる場合があります。 ちなみに同様の取り組みをおこなっている三重県松阪市では、2024年6月1日~8月31日までの3か月のモニタリングで、救急出動件数および救急搬送件数が前年同期から約2割減少したほか、救急搬送者の軽症者率が6.5%減少するといった結果が出ています。
このように選定療養費の徴収によって一定の効果がみられており、SNS上においては「救急車をタクシー代わりに使う人がいるらしいから良いと思う」「全国でもやるべき」といった好意的な意見が寄せられました。 その一方で、「本当に重症でも通報しない人が出てくると思う」「救急車が必要かどうかの判断が難しそう」など懸念の声も聞かれます。 茨城県では「救急車要請時の緊急性があると判断される可能性が高い主な事例」として、以下のような症状を紹介しています。 ーーー ●物を喉に詰まらせて、呼吸が苦しい ●急な息切れ、呼吸困難 ●意識の障害(返事がない、様子がおかしい、もうろうとしている) ●けいれんが止まらない ●ろれつが回りにくく、うまく話せない ●顔半分が動きにくい ●突然の顔や手足のしびれ ●突然の高熱 ●突然の激しい頭痛・腹痛 (15歳以上の症状から一部抜粋) ーーー
上記のように少しでも緊急性を感じた場合は、ためらわず救急車を呼ぶことが大切です。 また救急車を呼ぶかどうかで迷った際には、救急電話相談窓口(#7119)や全国版救急受診アプリ「Q助(きゅーすけ)」などの利用を検討しましょう。 ※ ※ ※ 救急車を呼ぶ際に緊急性が認められない場合、患者から選定療養費を徴収する仕組みが茨城県で始まりました。 これによって緊急性のない搬送が減少するのか、また対象となる県内22の病院にどのような影響があるのかなど、今後の動向を注視していく必要があるといえるでしょう。
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