2024年も残り1カ月を切った。個人投資家にとっては、年間の投資成果とともに「儲け」に対する税金も気になるところだろう。一昨年と昨年は歴史的円安でFX(外国為替証拠金)取引が注目された。今年は、12月5日にビットコイン価格が初めて10万ドル(約1500万円)を突破するなど、「暗号資産の年」と言えるかもしれない。 【写真】ビットコイン10万ドル突破の最大の立役者 1月に米国でビットコインETF(上場投資信託)が登場、11月には暗号資産に友好的とされるトランプ氏が大統領選で当選し追い風が吹いた。しかし、強気相場に浮かれてはいられない。祭りの後にはシビアな課税が待っているからだ。 (森田 聡子:フリーライター・編集者) ■ 利益は1000万円をゆうに超えたが… 2024年11月の米国大統領選をめぐるトランプトレード。その主役となったのが暗号資産だ。 かつては暗号資産に懐疑的だったトランプ氏だが、選挙期間中の7月に行われたイベント「ビットコイン2024」では「米国を暗号資産の中心地にする」と力強く宣言。暗号資産業界に友好的な環境整備が進むという見方から、トランプ氏の歴史的勝利後はビットコインが初めて10万ドル台に乗せるなどビッグラリーが展開された。 日本でもそれに乗じて大きな利益を得た個人投資家が少なくないと聞く。東京都在住の30代男性もその一人だ。11月に確定した利益は正味でゆうに1000万円を超えた。 男性はコロナ禍の投資ブームの際に暗号資産投資デビューした。同僚がこぞって購入していた米国株式よりも、ダイナミックな値動きの暗号資産に魅力を感じたと話す。 だが、男性が投資を始めた頃から相場はダウントレンドとなり、「何度か勝負をかけたけれどほとんど失敗した」という。今回大きな利益を得たことで「やっとクロが出た(黒字になった)という感じ」と安堵する。 しかし、初めて大きな利益を出したことで今度は課税関係がどうなるのか気になった。暗号資産の投資情報サイトではしばしば、一般的な金融商品と比べて利益に対する税負担が重いことが指摘されていたからだ。 そこで、税理士事務所を開いている幼なじみの父親に、2023年の所得をベースにどれくらいの税額が増えるのか試算してもらった。すると、暗号資産の利益を計上することで所得税と住民税を合わせて400万円以上もの負担増となることが分かった。 なぜこんなに税金が課せられるのか。
■ 400万円も税金が増え「うれしさ半減」 それは税法上の扱いによる。暗号資産は「雑所得」となり、年間の利益が副業収入など他の雑所得と合わせて20万円より多くなったら申告が必要になる。 「総合課税」方式で会社員なら給与所得と合算した総所得に基づいて税額を算出するため、累進課税の税制下では税率が高くなりがちだ。 「上場株式の利益は仕組み債の損失と相殺できるし、FX(外国為替証拠金)取引の利益なら先物取引の損失と相殺できるんだけど、暗号資産は暗号資産の間でしか損益通算できないんだよね」 経費を計上して税金を減らすといっても、取得費や出金手数料、取引手数料くらいしかない。友人の父親である税理士は気の毒そうに話してくれたという。 それだけではない。男性の場合は配偶者控除がゼロになったのも痛手だった。 男性の妻は今話題の「103万円の壁」の範囲内で働いており、これまで彼は38万円の控除を満額受けてきた。しかし、ビットコインの売却益によって自身の所得が1000万円を超えてしまうため、配偶者控除の恩恵にはあずかれない。 “上限突破”は定額減税でも起きてしまう。 2024年は6月から納税者や生計を一にする配偶者、扶養親族1人につき3万円(所得税のみ、他に住民税1万円)の定額減税が行われている。この男性も給与や賞与から減税を受けたが、所得が定額減税の基準(納税者本人は合計所得金額が1805万円以下)を超えてしまうため、申告時に“返納”する格好になる。 「投資歴3年でせっかく利益が出たのに、配偶者控除や定額減税が消失して400万円も税金が増えるなんて、うれしさ半減ですよ」 男性が解せないのは株式投資家との“格差”だという。
■ 「政府は暗号資産に“塩対応”」 男性と同時期に株式投資を始めた同僚は今年、新しい少額投資非課税制度(NISA)の口座への移管のために特定口座(源泉徴収あり)の株式を売却し、それなりの利益が出たらしい。 その際に徴収された税金は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)。それで課税関係は終了するので、面倒な申告をする必要もない。 特定口座(源泉徴収あり)での売却益は所得にはカウントされず、配偶者控除や定額減税への影響も気にせずに済む。 「政府は資産運用立国目指していろいろやっているみたいですけれど、正直、暗号資産には“塩対応”なんですよね」 グローバルな暗号資産市場が拡大する中で、現行税制では暗号資産を他の金融商品より不利になる雑所得として扱うことから、Web3企業や個人資産が国外に流出する現象も起きている。 そうした中で業界団体などは今年も課税方法の変更、株式などと同じく税率20.315%への統一、最長3年間の損失の繰り越し控除の導入などを求める要望書を政府に提出しているが、見送られる公算が大きい。 “塩対応”が続く見通しとはいえ、先の男性に株式へ方向転換する考えは毛頭なく、来年以降も暗号資産への投資を続けていきたいという。法人を設立することで税率を抑えたり経費の範囲を広げたりして節税につなげることもできるが、「法人化するような規模じゃないんで、現状は地道に利益の圧縮とかをやっていくしかない」 金融税制に詳しい税理士は「来年の確定申告では男性のようなケースが増える」と注意を促した上で、特に気を付けたいのが年金暮らしやプチ副業をしている暗号資産長者だと指摘する。
■ ふるさと納税の上限額は大きく上がっているはず 「年金の場合は年収400万円以下を対象とした申告不要制度がありますが、暗号資産の申告を行う場合は、年金の分も一緒に申告することになります。副業収入も経費を差し引いて年間20万円を超えなければ申告不要ですが、このケースでも暗号資産を申告するなら同時に申告しなければなりません」 もともと重税感のある暗号資産の税金が、年金や副業収入によりさらにかさ上げされる可能性があるわけだ。そんな暗号資産長者に先の税理士が勧める、このタイミングでの最強の対策がふるさと納税だ。納める税額が減るわけではないが、受け取った返礼品の分だけお得になる。 「暗号資産効果で控除の上限額が大きく上がっているはず。12月中に日用品やこれから受け取る米の頒布会などの返礼品を選んで寄付をすれば、来年の家計の足しになる。返礼品が決められない場合は、ポイント制を導入している自治体で利用価値が高そうなところを選んでおくのも一つの手です」 ※実際の投資や売買に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。
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