「老後にいくら必要か」という問いに対して「これぐらいあると安心だよね」といった話をすることもあるでしょう。「老後2,000万円問題」が広まって以降は、2,000万円を軸に考えている人もいるかもしれません。しかし、実際には多額の資金を持っていたとしても老後が安泰とは限らないようです。 【早見表】年収別「会社員の手取り額」
老後は年金だけでは足りない?その根拠は
「老後2,000万円問題」の話題を発端に、年金だけでは老後は暮らせないという話が一気に広まりました。すでに知っている方も多いかもしれませんが、総務省が2016年に調査をした家計調査報告書に基づいて計算されています。 公的年金収入と老後にかかる生活費を差し引きすると、夫65歳以上・妻60歳以上の無職世帯では毎月5万5,000円弱の赤字になり、それが老後30年間にわたって続くと考えた場合、合計で約2,000万円の赤字になるという計算です。 ただ、年金や家計の事情は常に変化しています。2023年版の家計調査報告書ではどうなっているのか見てみましょう。 【夫婦ともに65歳以上の無職世帯の収入と支出】 〈収入〉 ・年金などの給付:21万8,441円 ・その他:2万6,139円 ・収入合計:24万4,580円 (税金や社会保険料等を差し引いた可処分所得:21万3,042円) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 〈支出〉 ・税・社会保険料等:3万1,538円 ・食料費:7万2,930円 ・交通・通信費:3万729円 ・光熱・水道費:2万2,422円 ・教育娯楽費:2万4,690円 ・保健医療費:1万6,879円 ・住居費:1万6,827円 ・家具・家事用品費:1万477円 ・被服及び履物費:5,159円 ・その他…5万839円 ・支出合計…25万959円 出典:総務省『家計調査報告書(2023年)』 上記は夫婦ともに65歳以上という前提です。妻だけを60歳以上で見るよりも、こちらのほうが現実に即しているでしょう。 可処分所得(実質的に使える収入)は21万3,042円、支出は25万959円で、1カ月で約3万8,000円不足するという結果です。もし30年生きるとすると、1,368万円ほどが足りないという計算になります。 これを見ると、2,000万円ほどの金額ではないということがわかります。ただ、もちろんこれは「平均値」での話です。実際には貯金や老後働き続けることによって得られる収入などによって大きく変わることは、言うまでもありません。
60代貯蓄額の現実…平均値と中央値の違い
では、世間の人はどれぐらい貯蓄があるのでしょうか。金融広報中央委員会による『家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)』を見てみましょう。 【60代の貯蓄額 平均値と中央値/二人以上世帯】 ・平均値:2,026万円 ・中央値:700万円 出典:金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』 平均値はすべての該当データを足した合計をデータの個数で割った数値のため、極端に多いの貯蓄を持つ人の影響を大きく受けます。そのため、中央値を併せて見るのが一般的になっています。 上記を見ると平均値は2,026万円ですから、先ほど「不足する」と言っていた金額を補える金額です。ところが中央値は700万円で、老後の赤字を補填できる金額に達していないことがわかります。 ただ、結局これらの金額を超えているかどうかは、老後を安泰に暮らせるかどうかとはと直接関係ないのです。平均値を余裕でクリアしていたにも関わらず、老後破綻ギリギリになってしまうケースもあります。
貯金7,000万円で悠々自適の老後を満喫も…ジリ貧老後へ
年金暮らしをする竹内幸一さん(71歳・仮名)は現役時代に都内中小企業の部長を務め、65歳時には貯蓄が7,000万円以上ありました。それから6年、お金は驚くほど減っています。その理由はこうでした。 竹内さんは働きづめの現役生活を終えた後、老後を満喫しようと決めていました。念願だった妻との海外旅行へあちこち出かけましたが、その際には高級ホテルを選び、飛行機はビジネスの贅沢旅行。なぜなら、老後ライフは40年以上働いてきた自分への「ご褒美」だと考えていたからです。 また生活レベルは現役時代と変えることなく、むしろ外出や外食が増えたことで支出は増えていました。友人や元部下に会うと、つい気前のいい性格が出て、現役時代と同じ感覚でご馳走をしてしまいます。そんな生活で貯金は目に見えて減っていましたが、それでも「年金収入もあるし大丈夫」と考えていた竹内さん。 しかし、単身で暮らす高齢の母が倒れたという連絡が入り、事態は一変します。介護が必須な状態になりましたが、母は貯金をほとんど使い切っていました。自宅で過ごしたいと懇願する母に、妹が面倒を見てくれると名乗り出てくれたものの、介護にかかる費用はすべて竹内さんが負担することに。 実家のリフォームも妹に必要だと言われ、数百万円を費やしました。妹には「貯金は十分ある」と話しており、遠慮されることもなかったのです。 支出はさらに重なります。マイホームの修繕や車の買い替えで1,000万円近い出費。さらに、遅くに結婚した息子に子どもが生まれ、お祝いのほか住宅購入の補助も。その結果、潤沢だった老後資金はあっという間に1,000万円を切り、気づけば数百万円まで減っていました。 生活レベルを下げるどころか、むしろ豊富な老後資金に安心して上げてしまったこと、思わぬ支出があることを想定せず、無計画に使ってしまったことで、70代になってこの先が不安になる事態に追い込まれてしまったのでした。 「もう余裕がお金がないなんて、妻にも妹にもとても言えない…いったいどうしたら」 年金は月25万円ありますが、“お金があって頼れる男”として色々と支払うことを考えるとまったく足りず、途方に暮れています。 頑張ってきた自分にご褒美を与えることは悪いことではありませんが、限度があります。また、お金があるようなふるまいをしていれば、周囲が悪気なく頼ってもしかたがないでしょう。「他人よりたくさんお金がある」といっても、使えば減っていくのは当たり前のこと。老後は想定外の出費が重なることも多いので、資金計画をしっかり立てることが欠かせないでしょう。
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