皇后雅子さまは12月9日に61歳の誕生日を迎えられた。皇室の活動が本格化し、周囲を明るくする笑顔が見られるようになったとともに、雅子さまの顔の上で輝くティアラを目にする機会が増えた。今年の元旦に皇居・宮殿で執り行われた「新年祝賀の儀」では、女性皇族が4年ぶりにティアラを着用。そして6月に訪英した際の晩餐会では、皇后の「第二ティアラ」に注目が集まった。そして「皇后のティアラ」「皇太子妃のティアラ」と、雅子さまを煌めかせてきたティアラの魅力を紹介する。 【写真】圧巻の輝き!雅子さまの「菊の宝冠」と王朝の「薔薇」96個のルビーとピンクダイヤの宝冠はこちら! * * * 英国を公式訪問されていた天皇、皇后両陛下は6月26日(日本時間)、ロンドンのバッキンガム宮殿でのチャールズ国王夫妻主催の晩餐会に出席。このとき、皇后雅子さまの顔の上で輝いていたのが、歴代の皇后に受け継がれてきた「皇后の第二ティアラ」だった。 ■日本の美意識が昇華「菊の第二ティアラ」 菊の花をモチーフにした第二ティアラは、大正時代に御木本(現・ミキモト)が「皇室公式用御冠調製」として納めたティアラで、歴代の皇后に受け継がれてきたものだ。 宝飾品業界に従事する人物は、平成の時代に制作されたティアラと比べると重量感があり、堂々としたデザインであると話す。 「菊や葉にしっかりと厚みを持たせた写実的な細工。たとえば、花弁は1枚ずつ階段を昇るように重なり合い、一輪の菊を完成させています。自然の造形美を日本の職人の手によって細工に昇華させており、欧州のティアラにはないデザインです」 隣に立つカミラ英王妃の顔の上で輝くのは、96個のルビーと豪華なダイヤモンドがあしらわれた「バーミーズ・ルビー・ティアラ」。ひとつひとつの宝石と細工が存在感を放つのが欧州のティアラだとすれば、波や水、雲や霞など形のない自然までを美しく意匠化してきた日本特有の感性が日本のティアラの魅力なのだという。
そして、2019年の天皇陛下の即位に伴う一連の宮殿での儀式やパレードで雅子さまが着用されていたのが、「皇后の第一ティアラ」だ。 実はこのティアラは日本製ではなく、ドイツの職人の手による宝冠だ。 1887(明治20)年2月15日付の朝日新聞の記事には、「皇后宮御冠(こうごうぐうのおんかんむり) 我皇室より独逸国伯林府御用金工師レオンハード及フィーゲルの二氏に命じて製造せしめられたる皇后宮の王冠を始め御装飾具(略)」とある。 ブリリアント型の皇后の第一ティアラは、60個のダイヤモンドをちりばめたドイツ製の宝冠で、9つのダイヤの「星」をトップに戴くデザイン。ダイヤの星飾りは取り外して花簪にすることも可能で、中央には21カラットのダイヤがあしらわれているという。 記事には、「百四十個の宝石を組み合わせたる御襟飾(おんえりかざり)並びに純金の御腕飾(おんうでかざり)の如き何れも華麗荘厳極りなきもの」として、装身具のネックレスと純金のブレスレットに140個の宝石が用いられたともある。 先の宝飾業界の関係者はこう話す。 「第一ティアラは一石一石が大きく、デザインも欧州の宝冠の色が強い。特に中央のダイヤはひときわ大きく、他のティアラとは別格です。まさに皇后にふさわしいティアラです」 ■「皇太子妃の第一ティアラ」は仏大使が交渉 やはり豪華さが目を引くのが、「皇太子妃の第一ティアラ」だ。 1993年6月9日、皇太子さま(当時)との結婚に伴い宮殿で行われた一連の儀式やパレードで雅子さまが着用されていたティアラで、晩餐会にもよく着用されていた。 1922年8月3日付の朝日新聞には、昭和天皇(当時、皇太子)と香淳皇后(結婚前は、久邇宮良子女王)の結婚の準備に伴うティアラの準備について報じられている。 「東宮妃として良子(ながこ)女王殿下の冠らせらるることとて多分仏蘭西へ御注文相なるべく是等の御交渉は駐仏石井大使に御下命ありしや(略)」と、仏国に注文するにあたり駐仏大使に交渉を任せた当時の様子が記されている。
ただ、翌23年9月の関東大震災の混乱で、結婚のための良子女王の調度品の一部が焼失するなど混乱もあった。 また、結婚の準備を報じる記事には、「国産品奨励の思し召しによって(略)装身具は御木本商店の工場に製作を下命された」(1924年1月14日付朝日新聞)と、装身具が国内産で製作されたことが書かれている。 この皇太子妃の第一ティアラは、ひときわ大きく豪華だ。 先の宝飾業界に従事する人物も、皇太子妃の第一ティアラは、宝石の大きさこそ皇后のティアラにおよばないが、手間をかけた装飾で特別さを感じさせる宝冠だと話す。 「宝冠自体の高さもあり、トップに戴くダイヤは沢山のダイヤで取り巻くことで煌びやかな存在感を放っている。透かし彫りで唐草文様を表現した地金をはじめとする凝った装飾からは、将来皇后になる方のための宝冠を作る、という当時の意気込みを感じます」 この皇太子妃の第一ティアラは、いまは皇嗣妃の紀子さまに受け継がれている。 ■愛子さまがお使いのティアラは優雅で可憐なデザイン 独特のデザインが目を引くのが、2016年のベルギー国王夫妻を招いての宮中晩餐会や、17年のルクセンブルク大公を招いての晩餐会で雅子さまの顔を輝かせていた「皇太子妃の第二ティアラ」だ。 こちらは、20世紀初頭に流行した幾何学模様と直線が特徴的なアール・デコ調のデザインのティアラ。トップには幾つもの真円の真珠が輝き、中央にはひときわ大きな逆ドロップ(しずく)型の真珠があしらわれている。 「アール・デコ調のティアラを着けた雅子さまの姿は、オリエンタルな魅力にあふれていました。また、英国のバッキンガム宮殿で開かれた晩餐会では、日本の美が表現された重量感のある皇后の第二ティアラを堂々と魅せておられた。宝飾に携わる立場としても実に嬉しいお姿でした」(前出の人物) そして、天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまは、ティアラの新調をまだ控えており、叔母の黒田清子さんから借りたティアラをお使いだ。 清子さんが昭和の時代につくった「内親王のティアラ」は、皇后や皇太子妃のティアラとも違う魅力がある。地金の唐草文様は細く繊細なラインで表現され、カスミソウなどの小花が咲くような可憐なデザイン。日本の職人らしい優雅さにあふれるこのティアラは、花のようにほほ笑む愛子さまによくお似合いだ。 ダイヤと真珠が煌めく皇室のティアラは、人びとを魅了してやまない。 (AERA dot.編集部・永井貴子)
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