かつて中東諸国において、日本は「信頼できるパートナー」として一目置かれる存在だった。1970年代、田中角栄元首相が中東戦争の際、アメリカからの圧力を退けイスラエル支援を拒否し、中立を貫いたことで、日本はアラブ諸国から厚い信頼を勝ち取った。
しかし、近年の日本はその存在感を大きく低下させている。中東での日本の評価は、わずか2年ほどの間に中国・韓国・インドに抜かれ、今や優先順位4位にまで転落してしまった。かつてはアジア諸国の中で最も信頼された日本に、何が起きているのか。
平和国家・日本のイメージに陰り
2023年に広島で開催されたG7サミットでは、ゼレンスキー大統領の参加が大きな話題となった。しかし、平和の象徴でもある広島での開催にもかかわらず、日本が「戦争継続」に同調する姿勢を見せたことに、多くの国民が疑問を抱いたという。
日本が国際社会で平和的な立場を示す機会だったにもかかわらず、結果的にアメリカ主導の流れに追従する姿勢が目立ち、かつての中立外交とは対照的だ。この変化は、中東諸国にも見透かされている。
中東諸国に見放され始めた日本の外交姿勢
現在の日本外交における最大の問題は、特定の国に偏りすぎていることだ。特にアメリカとの関係を最優先しすぎるあまり、中東諸国との信頼関係が崩れつつある。
サウジアラビアの経済誌が発表したアジア各国との経済関係における優先順位では、1位が中国、2位韓国、3位インド。そして日本は4位。かつてトップに立っていた日本は、数年で他国に追い抜かれた。これは単なる経済取引の話ではなく、「信頼度」にも直結するものだ。
外交の失態が信頼低下に拍車をかける
日本とサウジアラビアの間には、すれ違いともいえる外交的失策も起きている。日本政府がサウジに石油増産を要請した際、サウジのエネルギー相は「そのような話は聞いていない」と一蹴。その後、日本の経産大臣は「書簡を送った」と反論したが、サウジ側は「祝電にすら返答がない」と不満をあらわにした。
現地では「日本は返信もできない国なのか」と揶揄されたという。このようなやりとりは、信頼の損失へと直結する。外交は些細な配慮の積み重ねでもあり、こうした細部の対応一つが国の評価を大きく左右する。
商品力でも後れを取る日本ブランド
かつて中東で高い人気を誇った日本製品も、いまやその地位を韓国製品に奪われつつある。トヨタは依然として支持されているものの、多くの家電や電子機器などの分野では、韓国製品が「価格と品質のバランスが良い」として市場を席巻している。
韓国は政府と民間が連携して、文化やコンテンツを世界に広める努力を怠っていない。たとえば、Netflixで世界的大ヒットとなった『イカゲーム』は中東でも人気を博し、ドバイ万博の韓国パビリオンでは急きょコンテンツ展示が追加されたほどだ。
一方で、日本はこうした戦略的な発信や柔軟な対応において後れを取っており、その差はますます開いている。
全方位外交こそ、日本の未来を切り開く鍵
今、中東は大きな地政学的転換期を迎えている。アメリカとの距離を取り始める国が増える中、日本が過去のように「中立で誠実な外交」を展開すれば、再び信頼を取り戻すことは可能だ。
そのためには、アメリカ一辺倒の外交姿勢を見直し、多様な国との対話や信頼構築を進める「全方位外交」が必要不可欠だ。経済的・戦略的に重要な中東と良好な関係を築くことは、日本にとってエネルギー確保や新たな経済圏との接続にもつながる。
ヨーロッパ、アジア、アフリカの交差点に位置する中東は、世界の未来を占う重要なエリアだ。ここで存在感を示すことができれば、日本の成長にもつながるはずだ。
今こそ、日本は外交姿勢を再構築し、再び「信頼される国」としての地位を取り戻すべき時ではないだろうか。
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